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●2003.5.22 サチコさん寄贈作品●

心が狭くて、わがままで。


われながら、心が狭いとかわがままだとかガキくせぇとか、まあ。いろいろ。思うんだけどさ。でもやっぱり、心が狭くてわがままでガキくせぇんだよ。俺。わかってんだよ、そんなこと。わかってるから、まあ。こんなことになってるわけでさ。ああ。



「…、っ、ちょ、まって…!」

すたすた。

「まってください、って、ば!」

すたすたすた。

「ゼフェルさま……っ、!」


すたすたすたすた、がちゃ、キィ、


「なんで、なんで怒ってるんですか〜!!」
「怒ってねぇよ!!」


バターンッ、


おもいきりしめたドアの向こうでもう一度、困惑気味の声で名前を呼ばれたが。
カチャリ、と、右手でカギをしめたら、その音は廊下にも聞こえたらしく、さらにもう一度、泣きそうな声で名前を呼ばれたが。

心が狭くてわがままでどうせガキくせぇ俺は、ドアを開ける気にならない程度には、心が狭くてわがままで……、あー、何やってんだ俺。くそ。

ぐしゃぐしゃ、とかきまぜた前髪をひっぱって、落ち着こうと思った。思い出せばはらわたにえくりかえるさっきの場面も、きっちり思い出すことにした。そして、なんとなくドアを背にずるずる床に座ったのは、なんとなく。ドアの向こうで立ち尽くしているだろうアイツが、少しかわいそうだと思ったからだ。かわいそうなやつ。俺なんかが好きで、かわいそうなやつ。
俺なんかに好かれて、かわいそうな、やつ。


遠慮がちのノックが、三度、ドアを叩く。少しくぐもった声は、やっぱり泣かしたかなぁ、って思わせるには充分で、「ゼフェルさま……」、名前をよばれて少し、はらわたも冷えてくる。
こいつはすんげー優しい。甘ったるいくらいに優しい上に、それを誰それかまわずふりまく。わかっている。それはこいつのいいところだ。わかっている。

さっきよりもさらに小さいノックが、二度、ドアを叩く。何も聞こえてこない廊下から、ああ、泣いてんのかなぁ、と思って、かわいそうだと思うことさえ、俺のわがままだ。
誰にでも優しいこいつは、それがいいところのこいつは、今日も誰かにそれをふりまく。わかっている。それは悪い事じゃない。わかっている。それはこいつのせいじゃない。


俺にだけ、と思う、俺のせい。


こつん、と一度だけ。ノックというよりもただ、何かがあたっただけのような音に、どうしようもなくかなしくなった。あまりのかなしさに、思わずカギをあけて、思わず驚くそいつの腕をひっぱって、思わず勢いあまって床にすわりこんで、のぞきこんだその顔がやっぱり泣いていたから、思わず。そのままおもいきり抱きしめていた。



かわいそうなアンジェリーク。俺なんかに好かれて。



「ゼフェル、さま…、」


びっくりしたような、戸惑うような、少し震えている声を、ぎゅっ、とだきしめたらなんとなく、満たされたような気持ちになる俺は現金なんだろう。


「……おまえさ、」
「え…?」


背中ごしに抱きしめて、ふりかえろうとするそいつに顔を見られたくなくて、さらに力を込めた。顔は見られたくない。見られたら、ちょっとはずかしいだろ。



「あんま、……他のやつと、しゃべんなよ。」



はずかしいだろ。そんくらいで、怒ったとかさ。


「……え、でも、」
「しゃべんな。」
「でも、」
「いいから、しゃべんな。」
「で、でも……」
「……うんって言わねーと、離さねー。」
「ええっ!?」


■挿絵:綾姫■

自分でも言ってる事むちゃくちゃだとは思うし、いきなりもがきだしたアンジェを離さないようにしっかりだきしめなおすあたりは本気っぽいし、われながら。


「……うんって、言ってくれ、」


心が狭くてわがままでガキくさくても、今はそんな答えがほしかった。


「……はい。」


そして、そんな答えをくれるこいつが好きだと思う。




急に照れくさくなってだきしめる肩に顔をふせたら、さらにびっくりしたアンジェがあわてたように押しのけようとしたが。まあ、とりあえず。


「……あの、う、腕を…、」
「……いやだ。」
「ええ!?」
「『うん』じゃねぇし、おまえ。『はい』だし。」
「えええ!?」


そんなへりくつでじたばたともがくアンジェを絶対はなすつもりはなかった。だって、あれだ。今、顔見られたら憤死する。
だって、真っ赤だろ。たぶん。



「ゼ、ゼフェルさまっ!!」



かわいそうなやつ。俺にこんなに好かれちゃって、さ。








≪綾姫より≫
ぎゃー!ぎゃー!素敵ー!ぎゃー!!
「綾の国」77776hit(77777hitの惜しい番)の残念リクとして、お絵描き掲示板で捧げさせていただいたゼフェル&コレット絵が、まさかこんなに素敵なお話になっちゃうとは!!
「顔を赤らめてお絵描きしてくれた綾姫さまに、顔を赤らめて小説を書くことでお礼をば!」と、果敢に筆をとってくださったサチコさん・・・君は勇者だ!(筆じゃなくてキーボードというツッコミはなしの方向で。)
もとからつぼずぎゅんなサチコさんの文体で、つぼずぎゅんなゼー様を書かれて、これで萌えないはずがないじゃないですか、もー、萌えて萌えて萌え尽きそうです!ぎゃー!ゼー様かわいすぎー!!
特にへりくつこねこねなとこが!「『うん』じゃねぇし、おまえ。『はい』だし。」とかゆって!ああ!
管理人!かなり錯乱しております!こんな興奮は猫耳クライス以来かもです!!うわーん、サッちゃん大好きだゾー!!
もう、涙とはなぢで前が見えません。<嫌すぎ
サチコさんの素敵文章は、サチコさんのサイト「CHIROLU」にてもっとたっぷり味わえますので、是非どうぞ!すぐどうぞ!
ちなみに裏事情を申しますと、絵のネタには、某P氏の貢献(?)が・・・。チャットではいつもありがとう☆でも、ゼー様アイコンで抱き抱き攻撃は心臓がルンバでサンバです〜!

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