- Z:festa scene 2 -
written by sachico @ chirolu
special thanks : sera,ayahime,haruhi






それぽっちのことなのに、ただ手をつないだ、たったそれだけのことなのに、 胸のそこらへんがばくばくいってるから、焦った。 ただ、にぎっているのかにぎってないのか、わからないそいつの指の力が 妙にもどかしくて、気づいたら思い切りにぎりしめていた手が熱かった。


「……にしても、あちぃ、な。クソ。」


ごまかすようにそっぽを向いて吐き捨てたのは失敗だった。あわてて手を 離そうとそいつが動くもんだから、俺もあわてて、無意識に、あらためて。


ぎゅ、っとにぎりなおした手の力は、強すぎじゃねぇの?俺。










ぶらぶらさがる、赤提灯にそって歩いた。つないだ手のひらにうっすら 汗をかいて、だけどそれを離す気にはまったくなれなくて、何度も何度も 握りなおした。その度に、少しだけ顔を上げてこっちを向く視線が 妙に恥ずかしかったが、やっぱり離す気には、ならなかった。 赤提灯の色は、いろんなことを誤魔化してくれるなぁ、と。妙に感謝したい 気持ちだった。顔と手だけ、熱帯夜みてぇだぞ。なんかさ。



「…あー。なんか、食うか?」


焼きイカのにおいが鼻について、とりあえず聞いてみた。こたえるよう、 首を横にふったそれには、同感だった。うん、腹減らねぇよな。 なんか、むしろいっぱいだよな。腹が、つか、胸?


……うわ!ばっかじゃねぇの、俺…!



「っ、だよな!飯よりもいろいろ、さ!見てこうぜ!?」



別に口に出して言ったわけでもないのに妙に焦る。誤魔化すように 言って、あわてたまんまに歩いてしまった。途端、うっかりつなぎっぱなし だった腕をひっぱることとなり。結果。



トン、



…………、肩にぶつかったそいつが、とにかく、好きだと思った。



「わ、わりぃ…。」
「…い、いえ…。」



焼きイカのにおいじゃない、そいつのにおいにどうしていいかわからなく なりそうだ。思わず手も離してしまうくらいに、どうしていいかわかん ねぇくらいに。ああ。なんでこんなに、さぁ、



「………、あっち、見てみようぜ。」



そうして。離れてしまったそれをもう一度、 差し出した俺の手を、今度はそいつの方からにぎってきた。 のぞいたそいつの顔は、赤提灯さえ誤魔化すことはできないんだろう。 胸のそこらへんが、妙にかきたてられる色だった。










ソレ、を見つけたのは偶然でもなかった。
とりあえず、俺の右手にはヨーヨーなんかおさまってるし、そいつの左手には まっ黒のでめきんが悠々と泳いでいた。ソレを見つけたのは、なんとなく 見た隣のこいつが、やっぱりなんとなくソレを見ていて、つられて俺も見た から見つけた、ということだ。


「アレ。やりてぇのか?」


たずねたところで、小さく首をふるそいつがそれでもソレを見ていたわけで。 やりたくないらしい、が。じゃあ、なんでまだ見てんだ。
そして、その理由がわかるまで、俺は右手のヨーヨーをもてあそんだ。
ああゆうの、確かにこいつのイメージじゃねぇよ、な。んじゃ、なんで見てん だ?つか、ああゆうの俺、結構得意なんだよな。ガキの頃、むきになってやった 記憶がある。そん時はいろんなもん、とったんだよなぁ……。
なつかしさがそれへの興味を湧かせて、ふと、今はどんなもんが景品になって んだろう、そう思って並ぶおもちゃたちに目をやった。そして、



あ。



………あー。



なるほど、な。



「、おい。」
「え?」
「これ、持ってろ。」



え?、と、もう一度言ったそいつの右手を離し、かわりにヨーヨーを渡して 俺はそのままソレへと向かった。びっくりした顔で俺をみていたそいつが、 あわてて小走りで近寄ってきた頃には、俺はもう金も払い終わっていたし、 両手にはちゃちな銃をかまえていた。
俺、結構得意なんだぜ。「射的」。だからさ。うん。おまえ、アレ見てた んだろ?あの、景品。


(パン、)


あれ?……ひ、久しぶりだからな、うん。あと2発あんじゃねぇか。うん。 俺、結構得意なんだしさ。落ち着いてやりゃいーんだよ。落ち着いて。 落ち着いて。落ち着いて、


(パン、)


げ…!マジかよ!


「おにいさん、あと一発だよ〜。」
「うっせ!わかってるよ!」


思わず怒鳴ったら、的屋のおやじはおおげさに肩をすくめて「だめだったら もう一回チャレンジするんだね。」と言った。馬鹿ヤロウ。二回目だったら かっこわりぃだろーが!
チラッと見た目の端のそいつは、まだびっくりした顔のままこっちを見て いた。あー、くそ。得意なんだよ、マジで。なのに妙に緊張してんのはやっぱ、 こいつが見てるから、なんだろうな。あー、くそ。絶対あててやる…。


軽く息を吸い込んで、ゆっくり吐き出した。次、こそ。
狙いを定める左手と、引き金にそえた右手の人差し指に全神経をそそいだ。




あ た れ !




(パン、)




カタンッ、




「………よっしゃ!」
「おっ。あたったね。」


思わず声に出して喜んだことが少し恥ずかしかったが、それでもなんとも 言えない達成感で気分がよかった。倒れた箱ごと渡してきたおやじに 銃を返して、俺は小さなそのふたをすぐに開けて中身を取り出す。 そして右手のソレごと振り返ったら、そいつはさっきよりも 10倍以上びっくりした顔で俺を見ていた。


これ、だろ。おまえが見てたの。




「………ほらよ。」





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2番手サチコ、お目汚しですみません。
お口なおしは次ページで十分に。
ひめへバトンタッチ!
(以下、ゼフェスタッフみなさまへ)
(亀のろですみませんでした…!)
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